餅といえば日本では一般に、餅米や粒状の米を蒸して、臼などで搗いてつくる「搗き餅」の事をいいますが、一方で小麦粉等の穀物の粉とお湯を混ぜ、練って蒸し上げる製法のもは、「ねり餅」といいます。
ただし後者の方は、どちらかというと団子と呼ぶ場面の方が多いですね。
近頃ではお正月になると特に消費が増える餅ですが、もともと餅は季節の節目である節句や、お祝いの行事には欠かせないものでした。
目次
餅の歴史
お正月に鏡餅を神前にお供えするようになったのは1000年以上遡る平安時代、宮中で行われた「歯固めの儀」に始まった様です。これは年神様に長寿を祈願する意味合いが込められていたようですが、餅をお祝い行事の際にお供えしたり、食べたりする風習はさらに遡ること約3000年前の縄文時代後期からあったと考えられています。
侮れない詰まらせ事故!万が一の時の対処方
そんなわけでお祝い時に欠かせない餅。これからお正月を迎えるに辺り、覚えておいた方が良いのが、万が一の時の予防と対策です。
毎年餅をのどにつまらせ、窒息する事故は必ず起きている中、特に正月三が日においては救急車が出動する数も急増するようです。厚生労働省の調査では、毎年、食品を詰まらせた窒息が原因で死亡する方は4000人以上いるそうです。その中でも餅は2位のあめ玉、3位のこんにゃくゼリーをしのぎ、堂々の1位ですから、特に気をつけるべき食品なわけです。
「まさか自分だけは大丈夫」などとは決して思わない方が良いですし、一緒にいる周りの人が詰まらせてしまったとき、どう対処するべきか、ここで確認しておきましょう。
気道に物が詰まってしまったときの手順
ここでは日本医師会の救急蘇生法のページを参考に確認していきます。
- 状況を確認する。(自身の場合は周りの人に人差し指と親指で首もとを挟む仕草で詰まったことを知らせる。)
- 本人の意識、反応がある場合はまず、詰まっている物を取り除く。(手で掻き出す他に※1腹部突き上げ法と※2背部叩打法(はいぶこうだほう)があります。)
- 本人の意識が無い場合は119番し、指示に従い※3AEDや※4心肺蘇生法を行う。
大まかな手順はこの様にします。
では1.から確認していきます。
1.状況を確認する
大事なのは、周りの人が詰まらせたとき、とにかく早く気づくことですね。一緒に食事している時なら分かりやすいですが、自宅で別の事をしている場合は、声が出せなければ、気がつくのが遅れる可能性があります。そうならないためには、予防することがすごく重要かと思います。
喉に詰まらせやすい餅などは、極力1人では食べない事や特にお年寄りや小さな子どもが食べているときは周りの人が常に気にかけておくで大事を防ぐことにつながるでしょう。
また、餅などの詰まらせやすいものは
- 小さく切る。
- 食べる前にお茶、水などで喉を十分湿らせておく。
- 良く噛み、時間をかけて食べる。
- しゃべりながら食べない。
- アルコールを飲み過ぎない
このような事でリスクは減らせるはずですので心がけましょう。
2.本人の意識、反応がある場合はまず、詰まっている物を取り除く。
何より気道の確保が先決ですので、喉をのぞいて詰まっているものが取れそうだったら指でつまみ取るか掻き出します。
ただし、かえって奥に押し込んでしまってはいけないので注意が必要です。
無理はせず、手で取れそうになければ次に※1腹部突き上げ法が有効ということです(ただし妊婦、乳児以外)。方法は下部をご覧ください。
この方法は妊婦や乳児にはできませんので、その場合は※2背部叩打法(はいぶこうだほう)を行います。
腹部突き上げ法で詰まったものが取れなければ、もう一方の背部叩打法を、と言う順番に続けてみます。
とにかく気道を確保するために取れるまでこれを繰り返し行います。
それでもなかなかとれず途中、意識、反応が無くなってしまった場合は、速やかに119番してください。
尚、腹部突き上げ法は内臓を傷つける可能性があるため、行った場合には救急隊にその旨を伝えます。
無事、その場で異物が取れたとしても、念のため医師の診療を受けるようにしましょう。
3.意識が無い場合は119番!AEDや心肺蘇生法も!!
ぐったりして反応が無くなった場合は119番で救急車を呼び、救急隊が着くまで、心停止に対する心肺蘇生を行う必要があります。
ここで必要になってくるのが、この心肺蘇生やAEDに関する知識やある程度の事前訓練ですね。
心肺蘇生法の講習会は、医師会、日本赤十字社、消防署などで受けられるそうなのでもしもの時のために受けておきましょう。
※1 腹部突き上げ法(ふくぶつきあげほう)
救助者は、患者を立たせて後ろ側に立ち、手を患者の腹部に回し、横隔膜下部(へその上、みぞおちよりは十分下の辺り)を瞬時に突き上げるように圧迫する。この時、片手は拳を握り、親指側を腹部に当て、もう片方の手はこの拳を握るようにする。この動作により肺が圧迫し、空気圧で詰まった物を押し出すイメージ。
乳児、妊婦には行わず、1歳児以上の子どもは力の加減に注意が必要。
この方法は1974年、アメリカの医師ヘンリー・ハイムリックが医学誌 “Emergency Medicine“ に投稿したのがきっかけに、「ハイムリック法」とも呼ばれている。
国や機関によっては腹部突き上げ法よりも背部叩打法を推奨している場合もある。
※2 背部叩打法(はいぶこうだほう)
救助者は、患者の横に立ち、背中、左右の肩甲骨の間辺りを強めに何度もた叩きます。その際叩かない方の手で胸部を押さえておく良い。 これは座った状態でも構わない。患者が起き上がれなければ横向きに寝かせて救助者は膝をついた状態で、やはり同じように叩く。
乳児の場合は、片手でうつぶせにさせ顔を支えながら、なるべく頭を低く保ち、同じく肩甲骨の間あたりを手の付け根で叩く。
なるべく強く叩く方が良い様ですが、患者の体型に合わせる必要がある。
※3 心肺蘇生法(しんぱいそせいほう)
呼吸が止まって、心臓も動いていないと思われる場合の応急処置。
- 患者を仰向けに寝かせる
- 胸骨の下半分、胸の真ん中あたりに手の付け根を置き、両手を重ねる。
- 肘をまっすぐに伸ばし、一分間に100~120回の速さで、強く圧迫を繰り返す。(5秒で8回以上)
- 訓練を受けていない救助者は、救急隊到着までひたすらこの心臓マッサージ(胸骨圧迫)を繰り返す。
- AEDがあれば他の人に取って来てもらい、AEDの指示に従って使用する。
- 中断は最小になる様、なるべく他の人をまきこみ、交代で行ったり、横で秒数を数えてもらったりする。
窒息、溺水、小児の心停止は人工呼吸も組み合わせる方が望ましいとされてはいるが、これは訓練を受けた救助者以外は行わなくて良い。(行う場合は胸骨圧迫を30回毎に2回が目安)
※4 AED
心停止した際、機器が自動的に心電図の解析を行い、心臓に電気ショックを与えることにより、拍動を正常に戻す救命器具。
Automated External Defibrillatorの頭文字からとったもので日本語では自動体外式除細動器となる。
これは誰にでも音声ガイダンスに従って操作できるように設計されていて、2004年、7月から一般市民にも使えるようになり、公共施設などに多く設置されるようになった。
そんなわけで餅を食べるときはあらかじめ十分注意しましょう!
お雑煮にお汁粉やぜんざい。きなこ餅に磯辺焼き。日本人ならきっとこれからの季節、食べる事が増えるでしょう。
私も正月にはお雑煮はきっと食べます。
歴史を振り返っても餅はおめでたい行事に欠かせない食べ物でしたが、そんな時に喉に詰まらせてしまってはやりきれません。
今回は万が一の時のための対処法を確認しましたが、何よりそうならないことが一番です。
しっかり対策しておきましょう。