今年4月、庭石などに使われる「蛇紋岩(じゃもんがん)」という石に含まれるアスベスト(石綿)を吸入した事が原因で肺癌になったとされる男性(71)が熊谷労働基準監督署
に労災認定されていたようで、これは極めて珍しい事例だそうです。
蛇紋岩にはアスベストが含まれている
この事例で何が珍しいのかというと、今まで、蛇紋岩にアスベスト(石綿)が含まれている事自体が一般には知られていないそうなのです。
ですから、これは他にも多くの肺癌等の疾患者の中で、実は蛇紋岩が原因だったと認識していない人がいる可能性がある事を示唆します。
まず、「蛇紋岩」という庭石やコンクリートを作る際に使われる砕石などには、アスベスト(石綿)が多く含まれていることを認識しましょう。
因みにアスベスト(石綿)とは、天然の鉱石で、「無機繊維状鉱物」の総称です。「アスベスト」はオランダ語からきているそうです。
これが空気中に飛散したところで、長期間、吸入すると肺癌や中皮腫を誘引することは1,970年代から問題となっており、日本では厚生労働省の規制により現在、新たな石綿製品は作られていません。
しかしアスベスト(石綿)そのものの使用は禁止されていても、蛇紋岩を使うことは認められています。
今回、被害にあった男性も蛇紋岩にアスベスト(石綿)が含まれていることを知らなかった為、過去数年間にわたり、仕事中砕石場などでマスクも着用せずに吸入していたようです。
肺癌を患った後蛇紋岩を疑い、熊谷労基署に労災申請をしたところ、同署が取り除いた腫瘍の一部から労災認定基準値の数倍のアスベストを検出したため、労災認定に至りました。
労災(労働者災害補償保険)の範囲
ここで確認したいのは労災が認定される範囲です。
私たちは普段、仕事していても特別、大きな怪我でもしない限りあまり意識することは少ない労災ですが、いざと言うときは誰もがあり得ることです。
実は、私も過去に2度ほどこの労災制度の恩恵を受けた経験があります。仕事中での怪我でした。 治療中の費用は全て負担してもらえたのですごく助かったのを覚えています。
意外と適用範囲はあいまいな部分もあり、申請せずにこの制度を活用していない、又は事業者の都合で申請してくれない(事業者は労働災害を報告する義務がある)などの理由で自己負担してしまっている方もいるかも知れませんのでここで確認しましょう。
労働災害
労働安全衛生規則第97条
事業者は労働災害が発生し労働者が死亡し、又は4日以上の休業したときは、遅滞なく、労働者死傷病報告を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
労働者が業務中、けが、病気、障害、死亡する災害の事を「労働災害」といいます。
事業者は労働安全衛生法第120条により
これを怠ったり、事実と異なる報告をすると労働安全衛生法違反となり、違反した事業主等は50万円以下の罰金に処せられる
とあります。労働者はまずこれを頭に入れておくと良いと思います。
労働災害が認められるためには以下の条件があります。
業務起因性
:怪我、病気が業務によって発生したといえるかどうか(因果関係)
業務遂行性
:事業主の支配ないし、管轄下にあるか否か
例えば生理的行為(用便、飲水等)による作業中断中では、業務起因性はありませんが業務遂行性はあるので、労働災害として認められる様です。
また、業務行為そのものではないが、業務に通常付随する準備や後始末をしている時も業務行為として考えられます。
通勤災害
通勤も原則的には労災は適用されます。通勤災害は、直接には使用者に補償責任はないが、勤務との関連が強いという判断の元、昭和48年の法改正により労災保険の適用が認められた経緯があります。
しかし、通勤経路の途中に、通勤と関係ない目的でその経路をのがれた場合や、通勤と関係のない行為を行った場合は、ささいな行為を行うにすぎない場合(トイレ、休憩、ごく短時間の飲食等)を除き、その時点で通勤とは認められなくなります。
出張中の場合
出張中の場合のポイントは、私的行為中か業務関係中かというところです。
例えば、出張先や単身赴任先と自宅間での、移動中,事故で怪我をしたときも業務行為中ですから適用される可能性は高いです。
労災の申請
つまり、就業時間内において起こったことは、原則的に業務が原因と考え、とにかく、管轄の労働基準監督署に申請をするべきです。
休憩時間の場合は、その施設や就労場所の欠陥及び管理不備の場合を除いて、基本的に適用対象外となりますが、事業主により指定されている作業衣などに着替えている時間も業務行為として考えられるので、これも認定の可能性が十分あるようです。
おわりに
近年では、仕事によるストレス が原因の精神障害についての労災請求が増えています。「ブラック企業」や「過労による自殺」などのニュースは年中各メディアで取り上げられていますし、実際に、身の回りを見てみると理想とはほど遠い労働環境が極身近にみられるのが現状ではないでしょうか。
怪我や身体的な病気に比べてメンタル面の問題は非常に難しく、因果関係を証明するのが一筋縄に行かないように思いがちですが、本人や家族、遺族からすると案外確信をもっているものだそうです。
このような問題を取り扱うNPO法人等は各地にありますので、お悩みの方は相談されると良いと思います。
また、厚生労働省では、同省で作成したパンフレットに基づいて労災認定を行っています。
このパンフレットは、認定基準の概要を説明し、精神障害(自殺)の労災認定の考え方についてまとめたものです。
詳しく知りたい方はこちらに目を通すと良いと思います。
では今回はこの辺で。
くれぐれも、事故、病気には日頃から気をつけましょう!!
最後まで読んで頂きありがとうございました。