今回はフライパンに続き、土鍋のメンテナンスについて書いてみようと思います。
お気に入りの土鍋を見つけて使っていたら、あるとき突然、大きなヒビ。そして水漏れし、あえなく処分。という経験はありませんか?
とくに愛着のないものだったらまだしも、探しに探してやっとみつけたお気に入りの作家さんのものだったり、高級品で、使い始めたばかりでこうなった時のショックったらないですよね。
私も何度か経験しましたが、手作りの焼き物ともなると2つと同等の品はないので、ほんと口惜しい気分になりました。
でもここのところ毎日、土鍋でご飯を炊くようになってから、だいぶ土鍋の扱い方が身についてきたような気がしています。
ここで、土鍋をだめにしないためのポイントを3つに分けてまとめてみようと思います。
目次
土鍋の材料と構造を知っておこう
どうして、扱い方が悪いとヒビが大きく入って駄目になってしまうのか。その理屈を理解するために、今一度土鍋の構造から確認しておきましょう。
土鍋の原材料
土鍋は陶器ですから材料は粘土+長石(ちょうせき)+珪石(けいせき)を含むいわゆる土でできています。
磁器との違いはこの3つの要素の割合にあるようですが、ここで詳しくは割愛します。
とにかくその名の通り土でできている土鍋は多孔質(たこうしつ)といって小さな穴がたくさん含まれています。そしてその穴の中には常に空気が含まれている状態です。
それから陶器や磁器の表面には釉薬(ゆうやく)という草木灰や石灰石と長石などの砕石を水でといたものを塗り、本焼きすることでガラスの層が施されています。
この釉薬は装飾と同時に防水などの強度、汚れを防ぐという目的がありますが、土鍋の場合、底の部分はこの釉薬は塗られていない素焼きの状態です。
と言うことはつまり、土鍋の構造は
- 素焼きが剥き出しの部分
- ゆうやくが塗られている部分
- 空気が含まれている小さな穴の部分
この『3つの要素』からなっていると言えます。
この要素の違いから、火にかけた時の熱の膨張率にも違いが生じるわけです。
膨張率が違うことでヒビ、が入ることになります。(釉薬部分の範囲で入るヒビのことは「貫入〈かんにゅう〉」といい、製作工程の時点でも入るものです)
ですからヒビが入ること自体はごく当たり前の事で、ほとんどのヒビ事態は問題視する必要はないですが、このヒビから水漏れが起きることが問題です。
近頃ではメーカー独自の製法で作られている土鍋も多く出回っているようですが、昔ながらの伝統工法による土鍋は、基本的に急激な熱の変化に弱いのが宿命です。
ですから急な温度変化を避ける火加減をすることが最重要といえると思います。
くれぐれも外側が濡れた状態で火にかけたり、いきなり強火から火にかけるようなことは止めましょう。
(※私は、まだ慣れない時、よくふきこぼしを繰り返し、おおきな割れを起こしてしまったことがありました。。)
それでも、通常は蜘蛛の巣のような小さなヒビが入るものです。
そこで必要になるのがこのヒビに入り込み、つなぎとなってくれるもの。
それがデンプン質です。
接着剤にもなるご飯の接着力をうまく活用しよう
ヒビが入るのは通常避けられない事ですが、取っ手や縁の部分まで大きくヒビが入った物は使っていると危険ですから、そうなってはもうあきらめるしかありませんし、水漏れが起きても使えませんね。
そのような大きなヒビや割れが入らないように火加減することが重要です。
それと同時に必要なのが使い始めと日頃の「目止め」と呼ばれる作業です。最初は特にこれを怠ると修復不可能となりかねませんし、日頃もこまめにやる方が断然良い状態が保てます。
目止め方法
いくつかありますがもっとも効果的なのがお粥を炊くなどの飯粒をつかった方法でしょう。
- 新しい土鍋は水で洗い流し水気を拭き取ったら、自然乾燥で良く乾かします。(逆さに伏せたほうが早く乾く)
- 水気が完全に乾ききったら、もう外側は濡らさないように水とご飯を適量入れて弱火から火にかけます。
- ある程度土鍋全体が熱くなったところで中火にして沸騰させる
- 適宜好みのお粥になるまで煮る
- 自然と冷めるまで置いておく
ネットで「目止め方法」を検索すると分量や時間を書いていたりしますが、私はかなり適当にやっています。それでも今では問題なく状態は良好です。
要は常につなぎとなるデンプン質を浸透させていく事だと思いますので、最初だけでなくこまめに、残りご飯などで、お粥をつくると良いと思います。
他にも小麦粉や片栗粉を大さじ1、2杯/8分目、水から火にかけて煮る方法や、牛乳でもデンプンの変わりにカゼインという物質が目止めになったりするそうですが、やはりご飯が一番効果的だと思いますし、お粥は胃腸にやさしく、栄養補給できますから、健康面にもよいので、我が家では週に1,2度は土鍋でお粥をしていますが、やはりそうするようになってから、土鍋の調子は益々安定しているようです。
因みにご飯でつくる接着剤は昔から「続飯(そくい)」と言って、木工にも使われていますね。
桐や杉材はとくに相性抜群で仕口のみならず、板はぎ(幅方向に接着して幅広い板にする)にも使われていたようです。
飯粒はその位頼れる接着性を持っているのです。
日頃のお手入れ
日頃のお手入れで注意点を挙げると
- 使い終わったら、必ず自然と冷めるまで待ちます。
- 洗うのは水か、ぬるま湯で行います。とにかく急な温度変化を避けることが分かっていればトラブルは避けられると思います。
- 洗剤はできるだけ使わない方がよさそうです。土鍋は浸透性が高いですから洗剤が染みつく恐れが無いように仮に使ったとしてもすぐに、すすぎましょう。
- 傷つきやすいので金ブラシはさけて、柔らかいスポンジやタワシを使います。
- 洗い終わったら、自然乾燥でよく乾かすします。
土鍋のほとんどのトラブルには対処法がある
土鍋の構造を理解し、目止めを日常的にやって、扱いも無理なく手入れすることで通常、その土鍋は使い込むほどに程良いヒビが入り、そこに目止めが入り、みるみる馴染んできて、その頃にはその土鍋にすっかり愛着が沸いてくることでしょう。
そんな頃、油断してしっかり水気がきれないまま食器棚などに収納してしまい、そこからカビや臭いが発生。と言うこともよくある話です。 そこは十分気をつけたいところですが、そんな時にも対処法がありますので、慌てずに対応しましょう。
臭いが着いたら
魚を入れた鍋料理などで生臭さが染みついてしまった場合など、臭いが気になりだした時は
- 鍋に水を適量入れる(必ず水から)
- 茶葉や茶殻をひとつかみ入れる
- 弱火からはじめ中火で10分くらい煮る
- 自然と冷ます。
これで様子をみてください。臭いは取れてくるはずです。
焦げ、カビがついたら
焦げが着いてしまった場合はまずスプーンで軽くこそぎ落としてみて、頑固な場合は
- 鍋に水を適量入れる(必ず水から)
- 重曹、または酢を小さじ1程度入れる
- 弱火から火にかけて10分煮る
- 自然と冷ます
焦げには酸性のものとアルカリ性のものがあります。主に炭水化物、肉類は酸性なので、アルカリ性の「重曹」を、
キノコやカビはアルカリ性なので酸性の酢を使うと取れやすいようです。 野菜の場合は酸性のものとアルカリ性のものがあるようなので、重曹で駄目なら酢を入れるといった感じです。
最後に
土鍋に貫入、ヒビが入るのは普通のことで、ポイントはそのヒビにどう対応するかと言うことです。
最後にもう一度そのポイントを整理すると
- 使い始めはもちろん普段から時々は目止めを行う
- 急激な温度変化を避ける
- 使用前は外側を絶対濡らさない(吹きこぼれにも注意)
- 洗うときは水かぬるま湯で自然と冷めてから洗い、良く乾かす。(晴れた日には外で乾かすのも良い)
こんなところでしょうか。
それでは良い土鍋ライフを!!